当クリニックでは、内科一般診療や糖尿病、ほかにも高血圧や脂質異常症(高脂血症)など、幅広く診療を行っております。例えば血圧やコレステロールの高値を検診などで指摘され、医療機関を受診して内服薬を1~3種類程度服用しながら、日々変わりなくお仕事や生活をされている方も多くいらっしゃいます。

病院・クリニックを受診された理由として「薬がなくなったから」は、恐らくトップ3に入る動機ではないかと思われますが、ここで「服薬をつづける」ということについてひとつ考えてみようと思います。

 

そもそも、貴方はなぜ今の薬をお飲みなのでしょうか。○○(血圧、コレステロール等)が高いから飲みましょうと医師に言われたから、という理由が多いかと思いますが、高いとなぜいけないのでしょうか。

 

高血圧や脂質異常、高血糖(とくに食後)の3者は「メタボリックドミノ」と言われるものの上流にあり、これらを放置しておくとゆくゆくは動脈硬化などを来たし、脳卒中や心疾患につながっていくことが知られています。多くの方は、血圧が高いひとは降圧薬だけを、コレステロールが高いひとは脂質降下薬だけを服用しているために、「自分は血圧は髙いけど、コレステロールや糖尿は大丈夫だ」と思ってしまいがちです。しかし、これらの疾患は互いに連関していることも知られており、単に血圧が高いだけかと思っていたら、×年後のあるところで検査してみたら食後高血糖が生じていた…ということも決して少なくありません。

 

(メタボリックドミノ:国立循環器病研究センターWebサイトより)

 

薬を飲んでいれば大丈夫、無くなったら病院にもらいに行ってるから大丈夫、時々採血受けてるけど何ともないって言われてる…本当にそれで良いでしょうか。

 

血圧の薬を欠かさずに飲んでいても、血圧は病院で測ってもらうだけで自宅では全く測っていないという方、コレステロールの薬を飲んでいても、血液検査はコレステロールの検査だけで、血糖検査や動脈硬化検査は何年もあるいは全く受けていないという方も数多くいらっしゃいます。こうした方がある時にある病気になって、「薬はちゃんと飲んでいたのにどうして」と慌てておられるのを数多く目にしてきました。

詳細はまたの機会にお伝えしようと思いますが、血圧もコレステロールも「管理目標」というものがあり、その目標は年齢や性別、家系内に狭心症・心筋梗塞になった方がいるか、習慣的に喫煙しているか、耐糖能異常(糖尿病もしくは境界型)があるか…といった条件で変わってきます。そうした条件はひとりひとり違っており、また月単位、年単位で変化してくるものです。また血圧については、病院ではなく自宅での測定値で評価する必要があります。

 

漫然と同じ薬だけを長期間続け、治療を強化すべきタイミングで強化しないでいると、思わぬところで心血管病などにつながってしまう恐れがあります。また、治療を緩める(薬を減らす)べきタイミングでそれがなされなければ何らかの合併症につながることもありますし、もとい「無駄な治療」を受けていることになります。

ただ単に「薬が無くなったときにもらいにいく」ためだけに病医院に行く、というのでは疾病予防や健康維持にはつながりません。いつものお薬をもらいに行くのと同時に、ご自身の状態の評価…例えば、血圧の薬を飲んでいる方ならば、食後の血糖が高くないか、腎臓の機能は正常か、血管が硬くなっていないか、などを評価して下さいとかかりつけの先生にお願いするなどして、医療機関を上手に活用してご自身の健康維持につなげて頂ければと思います。