高尿酸血症・痛風   ~「痛み」だけの問題ではありません  ~

 

はじめに

皆さんは「痛風」という病気について耳にしたことはありますでしょうか。
患者の大多数は男性で、ある日突然、足の親指などの関節が赤く腫れて痛くなる、その痛みは「風にあたっただけでも痛い」と言われることから「痛風」と呼ばれています。健康診断や人間ドックで「尿酸」という項目がしばしば採血されますが、血中の尿酸が高い状態が続くと、血液に溶け切らない尿酸が関節などに沈着し、ある時突然炎症・痛みを引き起こしてしまうのが痛風です。痛みは後述するような治療が行われば無くなりますが、体内の尿酸が高いままであれば、体内に蓄積した尿酸が腎臓を悪くしたり、様々な合併症を引き起こしてしまいます。
かつては痛風は重症の病気でしたが、現在では有効な治療薬ができたため、正しい治療を受ければ完全にコントロールできる病気です。しかし、正しい治療法があったとしても、管理が「自己流」では問題があります。
高尿酸血症・痛風の治療は「生活習慣の見直し」「薬物治療」が二本柱となります。アルコール、食事など、生活習慣はどの程度までやる必要があるのか、どのような場合に薬物を開始するのか、という点が最も重要です。当クリニックでは、痛風・高尿酸血症の患者さんに対して、必要な検査と適切な評価、そして管理栄養士による食事面のアドバイスを中心とした治療を行っております。

 

痛風の疫学

かつて痛風は、中高年の男性に多い「ぜいたく病」とされてきました。現在でも痛風患者さんの95%以上が男性であり、最近の報告では我が国には100万人以上の痛風患者がおり、高尿酸血症の人はその10倍にのぼると推計されています。そして、最近では30歳代で初めての痛風発作を経験する人が最も多く、発病の若年化傾向があります。
痛風の患者さんは、活動的な性格で、仕事もするがよく遊び・よく食べ・よく飲むというようなエネルギーの出し入れの多い人に多い傾向があると言われています。しかし、こうした美食やアルコールだけが原因の「ぜいたく病」ではなく、これらを控えるだけでは治療として不十分な場合もあります。
(グラフ: 我が国の推計痛風患者数)

 

痛風は「全身の病気」

痛風の症状は、足の指などが腫れてひどく痛むというのが最も典型的ですが、この痛風発作(関節炎)は、痛風という病気の氷山の一角に過ぎません。痛風は、体内に「尿酸」という物質が異常にたまる、全身性の病気なのです。そうした異常蓄積状態が何年も続くと、尿酸はからだの中に沈着して害を及ぼします。関節に沈着すると上記の痛風発作を起こしますが、もっと怖いのは腎臓に沈着することによる腎障害です。全身の体液バランスや血圧調節などを司る腎臓が弱れば、ゆくゆくは脳卒中や狭心症・心筋梗塞などにも繋がってしまいます。

痛風は「痛い」という症状が強く出ますが、「痛みがなくなったイコール痛風が治った」ではありません。尿酸が高い状態のままでは次第に腎臓や各々の臓器もむしばまれていくのが、痛風の本当の怖さです。
痛風発作も腎臓などの臓器障害も、尿酸を正常範囲にコントロールし続ければ予防することができます。しかし何度も痛風発作のあった患者さんは、体内に相当尿酸がたまっているので、蓄積・沈着した尿酸を取り除くには、食生活の注意だけでなく薬の力を借りなければなりません。痛風治療とは体内の尿酸量を正常範囲に維持し続けることですので、発作の時だけでなく長期間にわたって治療を継続していく必要があるのです。痛風は確かに治りにくい病気ですが、幸運なことに完全にコントロールすることができる病気でもあります。

 

痛風の原因、検査

痛風は、血液中の尿酸値が高い「高尿酸血症」が原因となります。尿酸はからだの中の「エネルギーの燃えかす」であり、全ての人の体内で作られる物質です。また食物中のプリン体からも作られますが、プリン体は日常の食物にはさほど多く含まれていません。作られた尿酸は、おもに腎臓で血中から取り除かれ、尿中に排出されます。しかし、腎臓から尿酸を排出する力が体質的に弱い、肥満、飲み過ぎ・食べ過ぎ、運動不足、ストレスなどの要因が重なると高尿酸血症になります。
尿酸は体内では血液に溶けているので、血液中の尿酸濃度(血清尿酸値)が体内の尿酸量の指標となります。血清尿酸値が7.0mg/dlを超えると尿酸は血液に溶けにくくなり、「高尿酸血症」と呼ばれます。つまり、「高尿酸血症」とは「溶け切らない尿酸が結晶になって痛風になりやすい状態」なのです。(なお、女性の血清尿酸値は男性よりも低い傾向にあり、閉経後には少し高くなります。)
高尿酸血症でも、血清尿酸値が7.0mg/dlを少し超えるくらいであれば一生痛風にならずに済むことも多いのですが、血清尿酸値が高いほど短期間のうちに痛風になる危険性が高くなります。したがって、痛風発作や症状がなくとも血清尿酸値が常に9.0mg/dlを超えるような大変高い場合や、腎臓の機能低下を伴っている場合は尿酸を下げる薬物治療が必要になります。また、高尿酸血症の患者さんは高血圧、糖尿病、心疾患、メタボリックシンドロームなどを合併していることもしばしばありますが、その場合はこれら疾患の治療を行いながら血清尿酸値のコントロールを行います。

 

痛風発作の症状、再発、経過

最大の特徴は、関節の激しい痛みと腫れです。場所としては足の親指(母趾)の関節が最も多く、他には足首、アキレス腱の付け根、足の甲の部分にも起こります。

発作中の関節の中では、血液中からの白血球と尿酸の結晶とが格闘しており、これに伴う炎症のために関節は腫れあがり強い痛みが起こります。この発作は1週間前後で治まりますが、一度に1つの関節だけが痛むのが特徴です。

痛風は発作の無い時には全く無症状ですが、発作は必ず再発します。再発までの期間は人それぞれで、1週間で再発することもあれば、5年経って再発する患者さんもいます。痛風発作を繰り返しているうちに、発作の間隔が短くなり、腫れも強くなります。一度に2つ以上の関節に発作が出たり、足だけでなく膝や手首の関節にも発作が出るようになると、相当重症になっている証拠です。その他にも、足の親指や肘関節、耳などに尿酸の塊(痛風結節)が生じたり、腎臓には尿路結石ができやすくなり突然の腰背部痛や血尿を生じたりもしますが、尿酸が蓄積した腎臓はその機能を次第に失い、ついには腎不全に陥ってしまいます。尿酸を下げる薬がなかった時代では、痛風患者さんの多くが腎不全で亡くなりました。

 

痛風の検査と治療

足の親指の関節などに突然生じた痛みや腫れであれば痛風の可能性を考えますが、痛風以外の病気との鑑別を行うために血液検査を実施します(血清尿酸値のほか、腎機能障害の有無を調べるために血清クレアチニンなどを同時に調べることもあります)。検査結果や症状・経過から痛風と診断された場合は、以下の3ステップで治療を行っていきます。

1. 発作を抑える「対症療法」

発作時には消炎鎮痛剤が短期間のみ使われます。また、発作の前兆症状期などにはコルヒチンが有効です。発作から間もない時期から尿酸値を下げる薬を飲み始めると、発作が逆にひどくなる場合もありますので、尿酸値を下げる薬は発作症状が落ち着いてから開始します。

2. 血清尿酸値を下げる「原因療法」

発作が治まったイコール痛風が治ったではありません。痛風発作の原因である尿酸値を一定の値(6.0mg/dl)以下に抑えておかなければ、痛風発作を繰り返すばかりでなく、様々な内臓障害が出てきます。血清尿酸値を下げる薬には、体内で尿酸をできにくくする薬(尿酸生成阻害薬)、尿中へ尿酸を追い出しやすくする薬(尿酸排泄促進薬)などがあり、患者さんの病態などに応じて薬剤と投与量を決定します。

3. 合併症を予防する「健康管理」

痛風患者さんは、肥満・高血圧・脂質異常症や糖尿病などを合併することが多く、メタボリックシンドロームとして動脈硬化が進みやすい体質になっています。尿酸を薬でコントロールしていても、これらの合併症までは防げません。痛風再発予防と体重コントロールを兼ねた食事療法や、場合によっては降圧薬、脂質異常症治療剤なども併用して、各臓器の合併症の発病を予防します。

 

当クリニックより-痛風の皆さんへ

これまで尿酸値なんて気にしたことも無かった、以前に痛風になったけど痛みも無くなったので治ったと思っていた、そのような方々がある日突然発作に見舞われてしまったならば不幸なことでありますが、それを機にあなた自身の尿酸値のみならず、腎臓や血管、コレステロールなどの脂質といった、からだ全体の健康状態に目を向け、全身の合併症から身を守り健康な人生をこれから歩んでいくことが出来れば、決して無駄にはならないと思います。当クリニックでは、痛風の患者さんが発作の傷みや合併症の不安を克服していけるように、医師・管理栄養士・看護師の各スタッフが一丸となってサポートいたします。